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保健室に入って勇が手を放すと同時に、ひかりが言い出した。
「ひどい、勇!窒息死したら、どうしてくれるの?」
「お前がそんな簡単に死ぬ訳無いだろ」
あくまでも笑みを浮かべたまま、宴が口を開く。
「まあまあ。立っていないで座ったら如何です?」
「あ、はい」
勧められ、二人は並んで椅子に座った。
宴も向かいの椅子に腰を下ろす。
「それで、私に何か御用がおありですか?」
「いや、用も何もそもそも何であんたが此処に……」
「勇を殺す為に来たの?それなら、させない」
二人の言葉を受け、宴は微笑んだ。
「私は此処に新しい養護教員として来たんですよ」
「え?」
硬直した二人に更に続ける。
「ちゃんと教員免許も持っていますよ。ついでに医大も出てるので医師免許も……」
「ちょっと待て。あんたみたいのが医者だって?」
「……やっぱり解剖専門とか?」
ようやく言語能力を回復した二人の反応を楽しむように、宴はにこやかに言う。
「研修は小児科でしたねえ。結構人気者でしたよ」
「…………」
いっそ、『実は私、結婚してるんですよ』とでも言ってもらえた方が、どれだけショックが少なかっただろう。
こんな見るからに血が好きそうな奴が医者なんて、何か間違っている。
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