第三章

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保志子の目線を追いかけて、煌人は紀絵に意識を固定した。 会った瞬間からずっと、この紀絵という少女が一番消極的な雰囲気を醸し出していると煌人も感じてはいた。 今の保志子が言ったことを鵜呑みにすれば、消えたメンバーたちとは直線的な関わりは薄いことになるのだから、当然と言えば当然のことだろう。 まるで、万引きを見つかり事務所へ連れてこられた学生みたいになってるなと胸中で思いながら、煌人は深刻な顔で俯く紀絵が口を開くのを待った。 念でも送り込んでいるかのように、雅と保志子は紀絵を凝視する。 確実に、その視線はプレッシャーになっているはずだと二人を注意したい気分が湧き出そうになるも、それより僅かばかり早く紀絵が引き結んでいた口を開いた。 「……あたしも、二人に協力を続けます。ここまできてやめちゃうのは、裏切るみたいで嫌だし。青葉さんたちみたいに保志子までいなくなったら、あたしは絶対ずっと後悔するとも思うので」
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