第三章

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「わかった。それなら、俺の知っていることも話せる限りは教えよう。ただ、一部俺が個人的に解釈した憶測も交えながらになることは最初に言っておく」 コーヒーで軽く唇を湿らせて、煌人は持ってきていた鞄からクリアファイルにまとめられた紙の束を取り出した。 その中から一番上に用意していた一枚を抜き取ると、テーブルの上へ置く。 「きみたちは、熊川(くまがわ)多津恵(たつえ)と言う女のことを知っているか?」 置かれた紙へ興味を示す三人を牽制するように訊ねると、全員タイミングを揃えたように首を横へと振ってみせた。 「今から十二年前の夏、東京のアパートで四人組の男に殺された女の名前だ。左右両方の(まぶた)を綺麗に切り取られた後、首を絞められて殺されたっていう事件だが……きみたちの年代じゃあまりピンとこないかな。当時はそこそこニュースにも取り上げられたりしていたんだが」 「……ちょっと、記憶にありません。でも、その女の人がどうしたって言うんですか? 東京で起きた事件なんて、何の関係もないでしょ?」
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