第三章

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「被害者は死後一週間以上が経過した状態で発見され、酷い異臭がすると通報を受けた警察が現場に駆けつけたときにはもう、かなり腐乱が進んでいて外見だけじゃ熊川多津恵本人かわからないくらいになっていたらしい。まぁ、猛暑で密閉された部屋の中に放置されていたら、そうなるだろうな」 お世辞にも気分の良くなる内容ではないにも関わらず、煌人は平然とした様子でコーヒーを(すす)る。 「警察が司法解剖した結果、死因は首を絞められたことによる窒息死と判明。死体には瞼が無くなっていて、これは死体があったのと同じ部屋に置かれていたゴミ箱の中から発見されたらしい」 酷い……と、呻くように雅が呟いた。 その呟きに同意するように首肯して、煌人はテーブルへ置いた紙の右上部分を指差す。 「まぁ、普通の事件ではないな。犯人グループと被害者の接点もなかったようだし、大方適当にめぼしそうな相手を事前にマークして、タイミングを見計らって計画を実行……ってところだったんだろう。これが被害者の熊川多津恵だよ」
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