第三章

29/70
前へ
/281ページ
次へ
「鏡の中に魂を閉じ込める? それじゃあ、この熊川多津恵って女の人は、鏡小屋に貼られてる赤い鏡の中に取り憑いてる……みたいな感じなんですか?」 「そうだな。そういった解釈をすれば間違いじゃないと思う。一応言っておくが、鏡小屋に貼られてるその赤い鏡。俺が思うに動物の血はほとんど使われていないはずだ。本物の血を使ったんなら、これだけ年月が経過して未だに一目でわかるほど鮮明な色をしているのはおかしい。恐らくは、儀式に使用したメインの鏡にだけ、野ネズミか野良猫の血を塗ったりした程度だろう。床に散らばる破片を片っ端から調べれば、痕跡が見つかるかもしれない」 気分が落ち着かないのだろう、不安そうに自分の胸元へ手を添えるような仕草をする紀絵に、煌人は淡々と己の調べた情報と考察を混ぜ合わせた推測を語り聞かせる。 「ばれたら面倒だろうからな。本物の血が付着した鏡はそのままにはできないだろ」 「いや、でも……そんな説明だけされても、やっぱり福島と東京を繋げる話にはなってないじゃん」
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加