第三章

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「失敗? どういう意味ですか?」 真剣な顔で、保志子が小首を傾げる。 「そのままの意味さ。ネットを使った儀式では、その本来の効果を充分に発揮されなかった。つまり、不完全な儀式に成り下がっていたわけだ」 煌人はゆっくりと前傾姿勢を作ると、テーブルの上で両手を組みそこへ自分の顎を載せた。 「つまり、本当なら魂を鏡の中へと閉じ込めるだけの儀式が、余計な二次創作を加えたせいで鏡に取り憑き他人を襲う悪霊を生み出す、似て非なる儀式へ劣化させてしまったのさ」 「それじゃ、皆が襲われた原因って、その身勝手な儀式の実験が失敗したっていう、それだけの理由で?」 到底納得できない。そう暗に告げるようなニュアンスで、雅も前のめりに上体を傾けながら言った。 「ああ。だが、最初に断った通り俺個人の推測も多く含んだ考えだ。どこかに綻びはあるかもしれない。実際、熊川多津恵の悪霊がどうやって被害者を増やしているのか、その具体的な手段はまだ見当もついていないしな」
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