第三章

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煌人と雅が顔を突き合わせ、それを他の二人が見つめるような構図となり、一瞬だけ煌人は周りには自分たちがどう見えているのかと意識してしまった。 喧嘩をしているカップル、と言うには年が離れている。 やはり少女をたぶらかそうとして糾弾でもされている風景、の方がしっくりくるだろうか。 ――いや、それ以前に、そもそも他人にそこまでの興味などもたないか。 数秒間で自問自答し、煌人はすぐに眼前にある雅の顔へ意識を戻す。 「被害者が全員行方不明になっている、という観点から、俺は熊川多津恵が鏡小屋へ訪れた者たちを何かしらの方法で、言葉通りに消し去っているんだと予想していた。しかし、今日きみたちと会って話を聞いたことで、それが間違っていたのではと考えが揺らいでいる」 話す煌人を、雅はひたすら見つめ続けている。 「俺と最初にやり取りをしていた飯嶌瑠花。その子のことが、今は一番気にかかる。鏡小屋へ行っていないのに、どうしていなくなる?」
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