プロローグ

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 1. ネット上に転がる眉唾な怪談や都市伝説の中にも、本物は混ざり込んでいる。 それは面白半分で生み出された数多(あまた)の創作話の山に身を潜め、常に暗く腐臭を放つ口を開いて獲物が近づくのを待ち続けているものだ。 福島県の某所にある“鏡小屋(かがみこや)”と呼ばれる場所も、そういった近づいてはいけない本物の一つだった。 八年ほど前から、オカルトサイトの片隅に埋もれるように存在する鏡小屋を扱った掲示板には、月に数人程度が閲覧し、またその中の何人かが書き込みをしている。 特に目立つこともなく、誰が最初に作成したのかも不明なこの掲示板には、ある不思議な法則ができあがっていた。 〈この話、マジなん?〉 〈今まで聞いたことすらねーな。完全作り話だってすぐわかる。口裂け女の方が信憑性高いだろ〉 〈ありきたりでつまらん。読むだけ時間の無駄だった〉 〈あたしはちょっと恐かった。本当の話だったらヤバくない?〉
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