プロローグ

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猛者の書き込みを見た利用者たちは各々そんな風に解釈を示し、〈口先だけ〉や〈無責任〉といった非難を時折交えつつも、特に深く追求することもなく全てがなぁなぁになり、常に更新される書き込みにより全てのやり取りは日々奥へと流れ埋もれていってしまっていた。 だが現実には、ここに書き込みをした猛者たちの全員が、実際に行動を起こし鏡小屋へ赴き、既にこの世から存在を消されてしまっている、という事実に気づける者などいるはずもなく、ただ静かに鏡小屋は訪れる獲物たちを飲み込み続けていたのだった。 そんなある日、人目につきながら誰からも疑われることなく呪いを撒き散らし続ける鏡小屋へ、疑いの目を向ける者が現れた。 「おかしい。これだけ不特定多数の人間に場所を特定されながら、全然噂が広まらないなんて。これはひょっとすると本当に……」 カーテンを閉め切った狭い部屋の中、若い男の声が小さく響く。 「呪いだの神隠しだの、面倒事にはなるべく関わりたくないんだが……こりゃあ竜関(りゅうぜき)さんの件は、慎重に調べないとヤバそうだな」 椅子の背もたれに体重を預け、男はデスクに放り投げていた煙草を手に取り一本咥える。
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