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目覚めた時、そこはいつもの部屋ではなかった。
どういうことだ。
あの部屋からは二度と出られないものだと思っていたのに。
「恒一!」
俺は白い部屋の白いベッドで眠っていたようで、ベッドの横にいたのは和樹ではなく知らない男だった。
「誰、ですか」
「えっ、何で敬語⁈」
人の良さそうなその男が困った顔をすると、その後ろからちょっと冷たそうな男が歩み寄ってきた。
「どこか調子の悪いところはありませんか?」
こいつはそんなに歳上ではなさそうだけど、何で敬語なのか俺も聞きたい。
「別に、どこも悪くないと思うけど」
答えると二人ともほっとしたように笑う。
敬語のほうがベッドの横の椅子に座って、横になった俺に視線を合わせる。
「あなたの名前と年齢を教えて下さい。俺は羽田紡、歳は十八です」
「俺はフォレード・エンテ、二十一歳です!」
紡のほうは丁寧に、フォレードのほうは大人なのになんか大人げなく割り込むように名乗ってきた。
「俺は加賀美恒一、歳は」
ぱっと出てこない。
それで、状況を察した。
現在の西暦と思われるものを引っ張り出して、生年から計算をする。
「十五、かな。俺は誰かに記憶をやったんでしょう。なんか、色々あやふやだ」
「五年くらい、記憶がなくなってる?」
フォレードが紡に聞くと、紡はうなずく。
五年も。
そんなに、何をしてるんだ俺は。
起きなくても良いと言われたが、俺は起き上がって二人に状況を訊ねた。
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