第1章

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十数年後、私は、良い人と結婚をする。 今でも、借金の取り立ての夢を見る。 大丈夫だ。夢だ。 あのときの電話が、 あのときの親の仕事の不渡りが夢に出てくるのだ。 マリさんとすれ違うことになる。 あのときの優しくて厳しいマリさんは、疲れた顔をして歩いていた。 娘の忍ちゃんに似てる人も歩いていた。 私の良い人と娘と歩いていたら、すれ違ったのだ。 本当は、ぎゅうって抱き締めて詫びたかった。 どんな風に謝ればいい? 謝っても謝りきれない。 想定しよう。 謝って、請求されたらどうする? 謝って、返して!って言われたら、多分力が及ばない。 そう、臆病になってしまったのも親父の妹のせいだ。 でも、とても大好きな姉みたいな人で、 酒豪で気前が良くて親父より男らしい人。 すごく心配してくれて、住み込みの仕事をした時に家によんでくれた。彼氏も紹介した。 彼氏を紹介しなさいと言われ、電話をお姉ちゃんの前でしたら こわい声をして、あんたに洋子は、渡さないよ?って笑ってた。お姉ちゃんの幼いむすこも渡さないよと真似してた。
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