141人が本棚に入れています
本棚に追加
何事もなかったように帰宅する。
「ただいま」
「おかえりなさい。夕飯はパスでよかったのね」
「同僚とビヤホールで済ませた」
「パパ、同僚は嘘でしょ。女の人の匂いがする。女性の同僚?」
「ええ!」
「洗濯しているから分かるの」
ス! ス! 鋭い! 浮気はこうしてばれるのか?
あそこではにおいには特に気を使っている。石鹸は香りの少ないもの、ローションは無香料のはずで、洗髪はしない、香水もつけていない。
石鹸は最初に全身を洗うだけに使い、最後は最小限しか使わない。残り香はほとんどしないはずなのに、匂いに敏感なのか? かまをかけているのか?
「好きな人がいるなら、はっきり言って」
久恵ちゃんが食い下がってくる。
「本当に!好きな女性や付き合っている女性はいない。し・し・しいていえば、久恵ちゃんだよ」
「本当?」
「誓って」
これは本当に本心。
「私、マンションでは妻ということになっているのでお忘れなく。浮気は絶対にダメ」
言い方がうれしい。でも怖い。やはりイベントは止め時かな、春野君に提案しよう。
最初のコメントを投稿しよう!