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それを聞いて、なるほど人間の機微に触れる作法だと感心した。記念すべき第1回目のイベントの彼女はここ5年間を振り返っても最高のレベルのテクニックの持ち主だった。運がよかった。当たりはずれは結構ある。
第2回目のイベントではもちろん指名してみたが、作法にあるとおり、親密度が上がったのが分かった。
終わってからの満足感。何気ない会話。心地よい疲労。このまま泊まってゆきたいほどのけだるさ。
きっと昔の吉原にはこういう良さがあったのだなと、しみじみ感じる。確かにこの年になって分かる。良いことを教えてもらった。春野君に感謝しなければならない。
毎回イベントの終了後は、彼と2人、ビヤホールで反省会をするのが恒例となっている。良いことを教えてくれたと感謝すると、川田さんなら秘密厳守で良さも分かってくれると思っていた、なんでも話のできる仲間ができてうれしいと喜んでくれた。反省会はいつもほどほどで切り上げて帰宅することにしている。
研究所時代の婚約破棄以来、自分が傷ついたのは自身のせいとあきらめられても、相手に取り返しのつかないことをした罪悪感に苛まれた。
もっと、言うべきこと、不満なことをぶつけるべきだった。そうして、お互いの理解をもっと深めていればよかった。
一番の後悔は、相手を大切に思わなかったこと、自分のことばかり考えていたのかもしれない。その後悔から、ずっと女性とは距離を置いていた。
ここ5年間、お互いの仕事が忙しくなければ、月1回位の頻度でイベントを実施して来た。面倒な駆け引きなどなしで、短刀直入に目的が達せられる。
うまくいってもいかなくても、その時その場だけの刹那的な関係で終わり、後腐れなし。気に入って指名すれば、親密度が増して恋人気分も味わえる。飽きてくると浮気して新しい彼女に乗り換える。
終わってからの満足感とその簡便さが気に入っている。また、経験した女性の数が多くなったことで、男としての自信もついてきた。
このごろ感じていることは、どんなに美人でも、すごいテクニッシャンでも、5回も通えば飽きてしまうことだ。
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