1.義理の姪と同居生活をすることになった訳

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マンション玄関はオートロック、鍵の入った財布をパネルの突起にかざして、奥のドアを開けると驚いて見ている。エレベータで3階へ昇る。 ドアを開ける。久恵ちゃんが緊張しているのが分かる。短い廊下を抜けて奥へ向かうと、ソファー、小さめの座卓、リクライニングチェアー、壁側の大型テレビだけのがらんとしたリビングがある。 「いらしゃい。我が家です。殺風景だけど、独身の男所帯だから勘弁」 「よろしくお願いします」 「お部屋だけど、久恵ちゃんの部屋はカギのかかるこの部屋。鍵がかかるといっても、外から十円玉で開けられるけど」 「おじさんは向かいのこの部屋」 「大きい方の部屋を私に?小さな方の部屋で十分なのに」 「小さめの部屋の方が何でも手が届いて便利だし、落ち着いて眠れると分かったからいいんだ。遠慮しないで使って。クローゼットが大きいので洋服がたくさん入る」 「私、家具や洋服は少ないの。小さいときにママと二人、小さなお部屋に住んでいたから。パパが買った家も小さかった。でも4畳半の勉強部屋がもらえて、とてもうれしかった。こんなテレビに出てくるようなマンションのお部屋に住むのが夢だったわ、ありがとう」 「久恵ちゃん、神様は人生を皆平等にしてくれているんだ。小さな部屋に住んでいた人には後から大きな部屋に住まわせてくれる。おじさんも小さなときには、風の吹きこむ小さな部屋に兄貴と2人いたんだ。人生悪い時もあれば良い時もある。人生行って来いだ。お父さんとお母さんを同時に亡くしたけどまた良いこともあるさ。今を大切に過ごせばいいんだよ」 「うん、おかげで良いことがありそうな気がする」 「それから、ここがトイレ。反対側が洗面所で中に洗濯機置き場、奥がお風呂でスイッチを入れるだけでOK」 「すてきなお風呂、私はお風呂が大好きでいくらでも入っていられるの」 「お茶をいれるわ」 「ありがとう」 「コンロは?」 「ガスではなく電磁調理器IH。このマンションはオール電化されている」 「へー」 「独り身でずぼらにはもってこい。その上安全だから」 「明朝、荷物が入るから管理人さんに伝えておこう。それから久恵ちゃんの紹介も」 二人で今度は階段を下りて玄関脇の管理人室へ行った。
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