0人が本棚に入れています
本棚に追加
大学の真っ白い講義室で、もうかれこれ二時間は待たされている。
今年は受験生が例年よりも多く、面接官も大変そうだな。
そんな中、俺は何をするのでもなくただ席に座っている。
手元にあるのは筆記用具と小論文の下書き用紙。
俺はこれを使って、ひとつ小説を書いてみることにした。
題名、『機械の様な担当職員』
目の前にいる無表情の担当職員を見てとっさに思いついた。
だが、これではどこかパッとしない。
『白い空間でのダルい時間』
まぁこんなもんか。
冒頭はどうしよう。
やっぱりパッと場面が浮かぶようなやつがいいな。
――大学の真っ白い講義室で、もうかれこれ二時間は待たされている。
うん。こんなもんか。
白で覆い尽くされた講義室は、本をめくる音と、トイレに向かう受験生の足音しか聞こえてこない。
あとは表情のない担当職員と、重たい空気と、他の受験生からの目線だけだ。
窓の外は薄暗く、雨が降っている。
対して、今俺がいるこの講義室は明るすぎて逆に不気味だ。
面接で俺の順番が来るまであと約一時間。
持ってきた文庫本をまさか読破してしまうとは思わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!