白い空間でのダルい時間

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 さて、冒頭の次はどうしようか。  台詞を入れたいところだったが、あいにく講義室は私語禁止でくしゃみくらいしか聞こえてこない。  俺はいきなり困ってしまった。  細長い長机に頬杖をつき、ただただぼーっとするしかなさそうだ。  斜め前のどこの高校だか見当もつかないような男子が、体をくねらせて腰の関節を鳴らし始めた。  講義室は無声ではあるが、無音ではなかった。  そのうち、遠くの方でやっと人間の声が聞こえた。  高くて細い、女子の声。  やつらはもう帰れるのか。うらやましい。  さて、会話が駄目となると、何を書こうか。  ここからはフィクションにしてみようか。  そうだ、前にいる奴が漏らしてしまうってのは――やめとこう。下品だ。  ではどうしよう。  天井からぶら下がっているスピーカーが真下の担当職員を直撃するっていうのは――やめとこう。面白くない。  それならどうしようか。  間違えて女子がこの講義室に面接しにくるってのは――やめとこう。意味が分からないな。  そんなことを考えていた次の瞬間、俺は気付いた。  そうだ、頭の中で面接の練習をしておかないと!  一番大事な事を忘れていた。  面接予定時間まであと三十分か。  もうそんなに経ったのか。  考えてきた事を思い出し、ルーズリーフにまとめる。  えっと……志望理由はこうで、自己PRはこうで――。  よし、書けた。面接予定時間まであと十分。  今度はこれを徹底的に頭に叩き込む。  えっと……私が貴学を志望する理由は――。 「受験番号下三桁でお呼びします。A組、二百二十五番、二百二十六番、二百二十七番。荷物をまとめて、ついてきて下さい」  あ、俺の番だ。とうとう来たか。  最後まで覚えられなかったけど、まぁ大丈夫だろう。  急いで荷物をまとめ、一番後ろについていった。  ――よし、こんな感じで良いかな。オチは無いけど。  小説を書き終えると、また俺は頬杖をついてダルい時間を過ごした。
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