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ニ
「おい! 君、大丈夫か?」
そのコを見つけたのは偶然だった。田舎道を散歩していたら、山に続く小さな足跡があり、その足跡をたどってみたら少女が倒れていたのだ。
こんな真冬の北国の山の中で倒れているなんて大丈夫なんだろうか。
少女は薄く目を閉じていたが、俺が声をかけるとゆっくり目を開いた。
しかし何も喋らない。意識がはっきりしていないのだろうか。
「起きられるか? しっかりしろ!」
相変わらず少女は反応しない。このままでは凍死してしまうかもしれない。
しかし田舎の山中である。携帯電話は通じない。
そういえば山のふもとに喫茶店があった。とりあえずそこまで運ぼう。
「今、運んでやるからな! しっかりしろ」
俺は少女の脇に手を差し込み、無理やり立たせると今度はそのまま肩に担ぎ上げた。
ファイヤーマンズキャリーという担ぎ方だ。意識のない人間を運ぶ時にはこの方法が疲れない。
少女を肩に乗せたまま、俺は数分かけて山をくだり喫茶店へとたどり着いた。
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