静かに死んでいく

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五  少女は俺の隣にちょこんと座ると紅茶を熱そうにすすっていた。猫舌なんだろう。  俺もコーヒーに口をつける。美味い。深く焙煎されており苦味も香りも強い。酸味は薄く濃厚な味わいだ。  これはブラックで飲むよりミルクと砂糖を加えた方が美味い。 「美味しい。まさかこんなところで好みのコーヒーに出会えるとは」  俺はミルクを入れながら素直な感想を店主に伝えた。 「ありがとうございます」  店主はそう言いながらチョコパフェを作っている。甘そうだ。 「コーヒーなんて苦いもの美味しいの?」  少女が声をかけてきた。 「あぁ、このコーヒーは特別美味いぜ。いずれ分かるさ」 「ふーん」  少女は興味なさげに返事して、紅茶に視線を落とした。可愛げのないやつだな。まぁそういう年頃なのか。 「お客さん、この辺の人じゃないでしょ。どうしてここに?」  店主が完成したチョコパフェを少女に運びながら聞いてきた。 「なんてことないただの一人旅さ」  俺はコーヒーを混ぜながら答える。白いミルクが渦のように溶けていく。 「こんな何もない町に? 変わってるね、お客さん」 「そんなことないさ、美味いコーヒーがあるじゃないか」  俺はふっと笑いながら答えた。我ながら気の利いた返しができたと思ったが、店主は軽く愛想笑いしただけだった。 「……実を言うと傷心旅行ってやつさ。そういう時は寂しい場所に旅行するもんだろ?」 「あぁ、日本海とか北国とかね。お客さん、センスが昭和の歌謡曲ですね」  今度は本当に笑いながら店主が返してくれた。うるせーやい。
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