静かに死んでいく

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六 「おじさんフラれたの?」  チョコレートで口のまわりをベタベタにしながら少女が聞いてきた。  子供は何でもまっすぐ聞いてきやがる。火の玉ストレートかよ。 「聞いてくれるのか? 面白い話じゃないぜ」 「いいよ。チョコパフェのお礼」  少女はそう言うとにこやかに笑った。はじめて見た少女の笑顔だったが、やっぱり子供は笑っている方がいい。 「冗談だよ。子供に愚痴るってなぁ、情けないぜ」 「子供じゃない!」  少女は頬を膨らませて俺の肩をこつんと小突いた。そういうところが子供だっていうんだ。 「フラれたわけじゃない。死なれたのさ」 「……」  俺が少し沈んだ声で話すと、少女は黙って俺の顔を見つめてきた。少女の目が続きを話せとうながしている。  こんなこと子供に話すようなことじゃないってのに。 「出会った時から先は長くないって分かっていたんだが、それでも俺は好きになっちまった。4年間、ずっと仲良く暮らしてたんだが、つい先月先立たれちまってな」  話していると涙が浮かんできた。鼻水も少し垂れてきて、涙声になっているのが分かった。俺はまだ全然吹っ切れていない。 「名前はなんていうの?」 「ハム次郎。太郎だと、ほら有名なハムスターと被っちゃうだろ?」 「男の子だったんだ?」 「いや名付けた後にわかったんだが、実はメスだったんだ。ハムスターのオスメスは判別しづらくて」  俺と少女の話を聞いていた店主がガクンと肩を落とした。
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