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すると、先輩は首を傾げながら
「でもさ、描き上げたのに、結局私に作品見せてくれなかったよね」
目をじっと見つめられ、反射的に逸らしてしまう。
「ちょっと……恥ずかしいので」
「えぇ、そんなの今更な気がするけど!?」
いや……あれは見せられない、ほんとに。
「ん~……」
と、暫く先は唸った後
「まぁ、君の作品が飾られる展覧会行くし、いっか」
……は?
「展覧会に展示とか聞いてないんですけど……?」
え、と拍子抜けしたような顔をして、すぐに笑い始める。
「え、応募要項見てなかった? 佳作も優秀作品も展示されるんだよ」
どこかは忘れちゃったから調べないとだなぁ、と付け足す。
「い、いや、行かないで下さいよ、ほんと」
「えぇ……」
途端に不機嫌そうに唇を尖らせて眉根を寄せる。
本当に、感情表現が豊かというか……子供っぽいというか。
「む、なんか今失礼なこと思ってるでしょ」
「いえ全然?」
得意のアルカイックスマイルを張り付けると、もっと分かりやすく拗ねられた。
「賞を獲った作品、どういうのかすごく気になるのに……」
む、と膨らませた頬がやけに可愛らしくて、つい、こんな事を言ってしまった。
「……夏と集大成がテーマだったので、先輩との思い出を描いたんです」
一瞬の間が空いて。
「……え、と、どういうこと?」
見ると、風にそよいだ髪を右手で抑え、頬にはほんのり赤みがさしている。
「え? ええと……」
思わぬ反応に動揺して、上手く言葉が続かない。
いや、好きだってバレたからこの反応なのか。
もしそうなら……やばいとかいうレベルではない!
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