白色の君

4/6
前へ
/17ページ
次へ
 「あの、色々描く題材考えたんですけど、撮った写真見返したらこの間一緒に行った花火のやつがすごく綺麗で」  なけなしの勇気を振り絞って、花火を撮りに行くという名目の元、なんとか誘えたものだ。  ……先輩が写真そっちのけで花火に見入っている最中、その後ろ姿を、こっそり花火と一緒にフレームに収めてしまった。  ちょっとした、出来心だった。  「先輩が映っていたものがあって……今、こうやって自分の居場所を見つけられたのも、先輩がいたからだなと思って」  もう、こうなればヤケだ。  勢いと、何か自分の中から湧いてくる熱いものに押し流されるように、言葉を紡ぐ。  「集大成って言われたら、先輩との毎日が思い出されて。 夏っていうキーワードは守りつつ、自分の描きたいものを描きました」  「夏」の部分は、花火大会のトリの部分であるスターマインを。  「集大成」の部分は、先輩との毎日を象徴した日々の一場面を切り取り。  ……そして、これからも一緒にいられますようにという願掛けも兼ねて、自分の姿も描いた。  先輩の隣に座っている自分を、欲のままに描き足した。  「わ、私を描いたの? え、え、え」  「だ、だから言いたくなかったんです。 恥ずかしいし気持ち悪がられたら僕死にたくなるので……!」  「ううん、そうじゃなくて」  「ふぇへ?」  頬をむにっと摘ままれ見ると、真っ赤な頬のまま口角をゆるりと上げ、嬉しそうに微笑む彼女と目が合った。  「嬉しいの、ありがと。 私も一緒に過ごせて、毎日が楽しいよ」  頬をつまんだのは、先輩なりの照れ隠しだったらしい。  毎日が楽しい、か……。  知ってはいたものの、そういう対象として見られてない。  少し凹むけれど、その程度だった。  これからもまだ、時間はある。  少しずつ、先輩との距離を詰めていけたらいい。  「なんか……普段こういう話しないので恥ずかしいですね」  「確かに! やめよっか、ね!」  お互いに赤い顔をしているのを笑いながら、1つの机を椅子と椅子で挟んで座る。    
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加