散歩部

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 好園高校には、部活動に強制的に参加しなくてもいい、という校則がある。    団体行動、グループ化というのがどうも苦手だった僕は、元々どこかに所属するつもりもなく、先輩からの勧誘を全部断っていた。  春に入学し、そこそこの「話せる程度の友達」は出来たものの、登下校を共にするような人はいないまま、入学する前に想像していたような、静かな高校生活を送っていた。  唯一の趣味である風景画を授業中に先生の目を盗みながら窓側の席から見て描き、放課後はさっさと帰宅して1人の時間を楽しむ。  何の不自由もなく、かといって特に楽しくもない、平凡な僕に相応しい日々を送っていた。  ……そして、夏本番の、からりと晴れた日。  いつも通り放課後のチャイムとほぼ同時に学校を出た僕は、田んぼを横目に帰り路を歩いていた。  そして、不思議すぎる光景を目にした。  「んん~……」  と、首を傾げながら1人で唸っている女子に遭遇した。  僕の15センチは低い身長で、真夏に傘を開き、太陽に向かって片手で剣のように振りかざしている。  ほっそりとした首から重そうな一眼レフを下げていて……写真部の人だろうか?  水色にこげ茶のラインが入っているスカートを着ているから、まぎれもなくうちの高校の生徒だ。  ついでに言うなら、差している傘は、日よけにはならないであろうパステル柄のビニール傘である。  ……見なかった、僕は何も見ていない。  今までの経験上、クセのある人とつるんでロクなことはなかったので、無視を決め込んで横を通り過ぎようとした時だった。
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