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真っ青な空の中に、階段のように積乱雲が浮かんでいて、青と白のコントラストが目に飛び込んできて。
そこに不釣り合いなビニール傘を差した男子……つまり僕の後ろ姿が収められている。
不思議と違和感はなく、むしろ控えめなパステルの柄も青空と調和し、1つの作品として成り立っている。
「きれい……ですね、とても」
「でしょ! 積乱雲の白さが大好きでね、今日だけでこんなに撮っちゃったの」
言いながら、カメラの写真を次々に見せてくる。
なるほど、確かに真っ白な積乱雲が目立つ写真ばかりだ。
……ざっと20枚はあるなコレ。
へぇ、とか、綺麗に撮れてますね、とか言っていたら、彼女の瞳がうれしそうに細められていくのに悪い気はしなくて、つい、踏み込んでしまった。
「次の展覧会に向けての写真を撮っているんですか?」
「え」
途端に目を丸くするのを見て、自分の失態に遅まきながら気付く。
出すぎたこと聞いてしまったと思っていると、
「あ、そっかそっか、私写真部とかじゃないんだよ」
カメラから手を離して笑顔で言うから、どうやら自分が彼女の気分を害したわけではなかったらしい。
そして、その後続いた言葉に唖然とした。
「散歩部なの」
「……散歩部」
「うん、散歩部。 部長と副部長を私が兼任してるよ」
……つまり。
「部員、あなた1人ってことで合ってます?」
ずっと差し出していた傘をようやく受け取りながら、
「勘のいい人って嫌われるんだよ、知ってた?」
「はぁ……まぁ、友達あんまりいないですし」
何気なく返すと、ハッとした表情で両手を合わせてきた。
「ごめん、 そうとは知らず……まぁ、私も部活一人でやってるし、似たようなものだけど」
あはは、と軽く笑いながら彼女は笑顔を向けてきた。
僕みたいのには眩しすぎるので止めてほしい。
それにしても、友達はたくさんいるのだろうし、他の人も誘えば良かったのに。
……なんて思っていると、それを見透かすかのように彼女はこう言った。
「わざわざ写真を撮って、それを水彩画とかデッサンしようって思う人、あんまりいないの。 絵を描きたい人は美術部に、写真撮りたい人は写真部に行くから」
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