プロローグ

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「分かっております。今は仲間意識が生まれても、しょせん混じり合うことも敵わない水と油の存在です。いずれ別れがくるまで、今少しの間、(たわむ)れを許してあげましょう」 「うむ、ではこれで・・・」  バサッと羽を広げ鷹が大空に舞い上がった。  その後を追うように、カラスとシラサギがじゃれ合うように、場所をくるくる変わりながら飛んでいく。 「悪魔とて元は天使だったんだ。問題を起こしていない悪魔を、憎めという方が難しいのに・・・」  オオハクチョウが憂いを込めた眼で見上げ、3羽の行方を追ったのだった。  怜良の母が亡くなり2年も経つと、はす向かいのアパートに住む怜良の母の従妹で、怜良の叔母にあたる黒井美智子が、面倒をみてあげると、何かと理由を付けて新出の家にやってきた。  家事が不得手な怜良の父みのるは、仕事、家事、育児を両立させるのにほとほと疲れ、黒井みちこの存在を受け入れ再婚をした。怜良には新しいは義母と二人の義姉ができた。  小6になったばかりの怜良は、まだ父の庇護(ひご)を必要としていたが、結婚するまで怜良にいい顔をしていた美智子とその娘たちは、家族になると同時に態度を変え、徐々に父と怜良の間に上手にはいり、父親を怜良から遠ざけていった。     
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