プロローグ

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 怜良より2歳年上の少しふっくらした明菜と、3歳年上の痩せ過ぎの真里菜は、お目々ぱっちり、睫毛バッサバッサのかわいい義妹の存在が面白くなく、部屋や持ち物を取り上げたり、必要のない買い物を言いつけたりしてこき使った。  最初こそ庭に飛び出し、木の陰で泣いていた怜良だったが、ある日を境に冷遇に屈しないことを胸に誓った。  それは、怜良が今は亡き母に買ってもらった大事な鏡を明菜に取られ、取り戻そうと激しく抵抗した矢先、騒ぎを聞きつけて部屋に入ってきた義母に頬を思いっきりぶたれたことに始まった。 「なんて乱暴な子なんでしょう。面倒をみてもらっている私や娘たちに逆らうなんて!こんな古臭い鏡なんて独り占めする価値もないでしょうに」  そして義母は明菜から怜良の鏡を取り上げると、窓から放り投げ、地面にたたきつけられた鏡は割れてしまったのだった。  大事な形見を壊され、蒼白になった怜良は外に飛び出していき、鏡の枠の上に破片を拾い始めた。  窓から覗く義姉たちがクスクスと意地悪そうに笑っているのを、軒にとまったカラスとシラサギが見て顔をしかめた。  ポロポロ涙をこぼしながら、鏡の破片を拾う怜良は、自分の前に飛び降りたカラスを見て手を止めた。  カラスがくちばしにガラスを咥え、怜良に差し出す。  えっ?と固まった拍子に、隣にシラサギが降り立ち、カラスと同じように鏡の破片を咥えて怜良に差し出した。 「あ・ありがとう」     
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