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その女性の娘と思われる女の子が、上体を乗り出してベッドの傍らに跪き、やせ細った母から何かを受け取っていた。
「ああ、あれが光ったんだな。クリスタルの小瓶か?」
蒼夜はカラスに変身しているせいか、キラキラ光輝く物が気になって仕方がない。
木から窓の上の軒に飛び移り、首を下方に伸ばして部屋を覗き込んだが、その途端、右斜め後ろから風が吹き、蒼夜は危うくバランスを崩して屋根から落ちそうになった。
何だ?と首を風の方向、つまり自分の横に向けると、真っ白なサギが庇に着地して、先ほどの蒼夜と同じように首を下方に伸ばして、部屋を覗き込む。
「おい、サギ野郎!クリスタルの瓶は俺が先に狙いをつけたんだからな。横からかっさらうなよ」
いきなりカラスに威嚇されて、シラサギが驚き、ぐらついて屋根から脚が離れた。
蒼夜は慌てて、シラサギの尾羽を咥え、屋根に引き上げる。
「危ねえな。お前、鳥なら羽ばたいてバランスとれよ。いきなり落ちるなんて、びっくりするだろ!」
「助けて下さって強縮なんですが、あの小瓶は僕のものなのです。僕は天真と言って・・」
「しっ!何か人間の母親が喋ってる」
蒼夜に話を遮られ、シラサギの天真は口を閉じ、カラスと一緒に軒から首を伸ばして、窓を覗き込んだ。
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