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内側に触れ合った放課後
学校という仕切られた世界の端っこに、ポツンと立つ鳥小屋のような旧校舎。そのまた隅の一階に美術室はある。もう使われなくなった焼却炉や、常に日陰でひんやりしているフェンスなんかに囲われた少し小さな教室。そんな見放された孤島のような場所で、私たちは、お互い一人ぼっちの部活を続けていた。
私はたった一人の美術部。そして葵はたった一人の文学部として。
私たちの旧校舎が取り壊されると聞いたのは、高校二年になった年の春だった。卒業と同時に工事が始まる。そう知った時、きっと自分が美術部最後の一人になると思った。葵も私と同じ気持ちを抱えていたと思う。一年生が入学しても、お互い部員募集は行わず、それぞれのやりたい事に没頭していた。
旧校舎と一緒に自分達の代で部活が終わってしまう。そのことを私たちは静かに受け止めていた。
その日も私たちは美術室で、それぞれの定位置に座り、それぞれの四角形に向き合っていた。私は胴がすっぽり入るくらいの油絵のキャンバス。葵は赤い表紙をしたA4のノート。
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