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交差していく平行線
「葵って赤が好きなの?」
梅雨に私がそう言った。
「うん。気分がいい時は赤、駄目な時は緑。泉にもそういうのある?」
「あるよ。私は青が好き。嫌いな色は…黄色かな」
「じゃあ今日はちょっとイライラモード?」
「そう、だね」
「じゃあこれあげる」
葵はそう言って鞄からお菓子を取り出してきた。『おっとっと』だった。
「これ、食感も好きだけど、ネーミングセンスが抜群にすごいと思う。だって『おっとっと』だよ。転びそうな時に出るセリフじゃん。ふつう縁起悪そうだから付けないよ、こんな名前」
箱を開けながら葵はそう言った。そう言われてみると変な名前で面白いなと思ったちょっとふざけて『おっとっと』と口に出して言ってみた。葵が笑った。そして私の真似をしながら同じセリフを言った。私も笑った。お互いに笑かしあいながらお菓子の箱を空にした。
その日の帰り道、コンビニに寄った。
どんなお菓子を買っていってあげよう。
甘いものだったら葵は何が好きかな。
葵は何味が好きなんだろう。
葵は何て言ってくれるだろう。
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