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葵は笑ってくれるかな。
そんなことを思うと、初めて葵の小説に自分の妄想を書き足した時の、あの胸のくすぐったさが蘇ってきた。体が小さくジャンプしてしまいそうになった。
その日の夜は明日がすごくすごく待ち遠しかった。
その日を境にラクガキスペースにはお菓子が置かれるようになった。
私たちはお互いをもっと知るようになった。
「葵の使ってるシャーペン。これすごく使いやすい。どこで買ったの?」
ある日、私が小説に落書きしながらそう聞くと、葵は文房具屋の場所を教えてくれた。
それから私も同じシャーペンを使うようになった。
「あちゃ~…。泉がいっつも黒い靴下履いてるのってこれが理由だったんだね」
ある日、葵が絵に落描きをしているとそう言った。葵の履いていた白い靴下に、絵の具が飛んでいた。
それから葵も黒い靴下を履いてくるようになった。
少しずつお揃いのものが増えていった。ラクガキを通してお互いの好きなこと嫌いなことを共有し合っていった。灰色の気持ちもお互いの作品にならぶつけることができた。
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