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入学試験
──国が滅んで七年。
ティナレットは〝罪人殺し〟として名を馳せる存在となっていた。
街から街へ、国から国へ。流れ流れて、罪人を殺す。彼は自国の愛した正義を正当化すべく、知らしめるべく、村を襲う賊を殺し、理解不能な趣味を持つ人攫いを殺し、盗みを働いた者を殺し、数え切れない程の人間を斬って捨てた。
その手に握られているのは薄い空色の、透き通った細身の剣。かつてヴァルヴァ国の王が持っていた、この世に一つしか無い宝剣である。彼は父のそれを継ぎ、世界に復讐する。勿論、自国を滅ぼした敵国に攻め入る事はしない。それは、母と交わした約束が許さない。
ティナレットは、たった今その金髪に浴びた返り血を拭う。決して揺るがぬ〝正義〟の文字。だが、それも、今夜が最後だ。
ティナレットは翌朝、とある国の門前に立っていた。まだ冷たい早朝の風が、ふわりと舞う。
彼は、疲弊し切っていたのだった。七年間ずっと、殺しを生業にしてやってきた。その間偶然耳にしたこの国に、一人の民として移住する決意を固めていた。
此処は、魔法使いや、その見習い達が通う巨大な学園らしかった。何を習うのかと言えば、戦争から身を守る術(すべ)。傷付いた人々を癒し、助けて、ただただ平穏な日々を過ごす。そんな学園兼国がそれ──アーマインゲイトである。
彼は早速、薄汚れた黒のコートをなびかせながら、入国手続きへと向かう。門番へ声を掛けると、近くにある小さな建物へと案内された。
こじんまりとしたそこの、机と椅子。彼は促された椅子へ座る。机を挟み、二人のスーツ姿の男が座った。
「入国手続き、此処では入学手続きと呼びますが、簡単な質問にお答え頂くだけで結構ですので」
にこやかな面接官は、紙とペンを用意してからティナレットへ問い掛ける。
「まず、貴方は魔法が使えますか?」
彼は、重たい口を開く。
「その件、なんですが。オレは魔法は使えません。魔力を持っていないんです」
「ああ、お気になさらずに。確かに魔法の学園ですが、魔力の無い方も入学しています。では、此処までの道中はそちらの剣で?」
「はい」
ティナレットが、腰に差した剣の鞘に触れる。
「剣術なら、我流ですが出来ます」
「それなら結構ですよ。さて、素朴な質問なのですがね」
面接官は少しだけ身を乗り出し、小声で尋ねる。
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