入学試験

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「貴方は人を殺せますか?」  当人は、硬直した。眉をひそめ、首を傾げる。 「ああ、変な意味ではありません。自己防衛程度で構いません。殺す事は出来ますか?」  彼は小さく、首を縦に振った。  面接官らはそれを見て頷き、立ち上がった。 「これにて手続きは完了です。お疲れ様でした。中へご案内しますので、こちらへどうぞ」  男の一人がティナレットを出口へと促す。彼は怪訝に思い、ふと机上の紙を見る。  何も書かれていなかった。 「それでは、いってらっしゃい。よきゲームライフを」  ──そこは戦地だった。  ティナレットは呆然と、瓦礫の山、半壊している建物群を見る。少し先の地面に散らばっているのは、明らかに血痕だった。 「なん、だ。これ」  話が違う、と門を振り返る。面接官の男二人は、笑顔で手を振っていた。  大きな音を立てて門が閉まる。どれだけ叩いて、体当たりをしても、ビクともしない。やられた、騙された。彼はそう悟ったが、手遅れだ。 「ヨォ、新入りちゃ~ん」  バッと振り返る。刃物や棍棒を持った賊達が、薄笑いを浮かべて集まって来ていた。ざっと十数人。 「一体どういう事だ。此処は平和な学園じゃなかったのか!?」 「ハーッ! バカだなぁ坊や?」  男の一人が、嘲笑いながら両手を広げる。 「此処はぁ、かの有名なアーマインゲイトだよ。そうだな、確かに三年前までは、平和の象徴って言われてたよ。けど学園長が変わって、方針も変わった。此処ではデスゲームが法律さ」  ティナレットが、柄に手を添えながら聞き返す。 「デスゲームって何だ」 「そのまんまだよ! 殺し合うのさ! 出国は許されない。此処で殺すか殺されるか、オレ達国民に与えられた権利はそれだけだ。残念だったなぁボク?」  男達がティナレットに向け、一斉に駆け出した。 「テメェみたいな間抜けな信仰者が、一番ぶっ殺しやすいんだよォ!!」  ティナレットは抜刀する。そしてひと薙ぎ。数人の男をねじ伏せて、更に踏み込む。その動きはまるで風だった。だが表情は険しい。  こんな事の為に、入学手続きをした訳ではない。 「クソッ……何だこのガキ!」 「待て、深追いするな。そろそろ他の新人殺しが、あちこちから群がって来る! 長居するとこっちまで狙われるぞ!」  残り数名になった男達は、じり、と彼から距離を取った。そして、背を向け逃げて行く。
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