0人が本棚に入れています
本棚に追加
「貴方は人を殺せますか?」
当人は、硬直した。眉をひそめ、首を傾げる。
「ああ、変な意味ではありません。自己防衛程度で構いません。殺す事は出来ますか?」
彼は小さく、首を縦に振った。
面接官らはそれを見て頷き、立ち上がった。
「これにて手続きは完了です。お疲れ様でした。中へご案内しますので、こちらへどうぞ」
男の一人がティナレットを出口へと促す。彼は怪訝に思い、ふと机上の紙を見る。
何も書かれていなかった。
「それでは、いってらっしゃい。よきゲームライフを」
──そこは戦地だった。
ティナレットは呆然と、瓦礫の山、半壊している建物群を見る。少し先の地面に散らばっているのは、明らかに血痕だった。
「なん、だ。これ」
話が違う、と門を振り返る。面接官の男二人は、笑顔で手を振っていた。
大きな音を立てて門が閉まる。どれだけ叩いて、体当たりをしても、ビクともしない。やられた、騙された。彼はそう悟ったが、手遅れだ。
「ヨォ、新入りちゃ~ん」
バッと振り返る。刃物や棍棒を持った賊達が、薄笑いを浮かべて集まって来ていた。ざっと十数人。
「一体どういう事だ。此処は平和な学園じゃなかったのか!?」
「ハーッ! バカだなぁ坊や?」
男の一人が、嘲笑いながら両手を広げる。
「此処はぁ、かの有名なアーマインゲイトだよ。そうだな、確かに三年前までは、平和の象徴って言われてたよ。けど学園長が変わって、方針も変わった。此処ではデスゲームが法律さ」
ティナレットが、柄に手を添えながら聞き返す。
「デスゲームって何だ」
「そのまんまだよ! 殺し合うのさ! 出国は許されない。此処で殺すか殺されるか、オレ達国民に与えられた権利はそれだけだ。残念だったなぁボク?」
男達がティナレットに向け、一斉に駆け出した。
「テメェみたいな間抜けな信仰者が、一番ぶっ殺しやすいんだよォ!!」
ティナレットは抜刀する。そしてひと薙ぎ。数人の男をねじ伏せて、更に踏み込む。その動きはまるで風だった。だが表情は険しい。
こんな事の為に、入学手続きをした訳ではない。
「クソッ……何だこのガキ!」
「待て、深追いするな。そろそろ他の新人殺しが、あちこちから群がって来る! 長居するとこっちまで狙われるぞ!」
残り数名になった男達は、じり、と彼から距離を取った。そして、背を向け逃げて行く。
最初のコメントを投稿しよう!