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逃げる男達を一瞥してから、彼は辺りを見渡した。何やら人影が、ぽつぽつと見える。どうやら新人を襲う者が他にもいるらしい。
彼は舌打ちをして、走り出した。一旦身を隠せる場所を探す。怒号があちこちから響いてくる。だが、その当人同士でも殺し合いが勃発している。怒号に混じり、断末魔も背後から響いていた。
廃墟と化した、とある一件の家に身を潜める。怒号と足音が遠去かり、消えた所で息を吐いた。一体どうなっている。学園長が変わり、デスゲームをする国になった?
「出国は許されない、と言ってたな……」
耳に付けた赤のピアスが揺れる。汗を拭う。
とにかく自分は、とんでもない事に巻き込まれてしまった様だ。これでは、放浪していた頃の方がずっとマシだった。
そっと壁から外を覗く。人の気配が無い事を確認してから、再び駆け出した。この国は広い。もしかしたら、何処かにまともな人間が隠れ住んでいるかもしれない。
砂埃と血痕。彼は咳を一つする。フードを深くかぶって、郊外と思われる方角へ向け、ひたすら走った。
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