6人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「暁、ここ間違ってるぞ」
「うそ!ごめんー」
あちらこちらで忙しそうに動き回ってる社員達。
書類のチェックをしていて見つけた誤りを暁に指摘すればクスクスと近くの席の女性達から笑いがこぼれている。
暁はイケメンとよばれてるけど、そのお調子者な性格からかわいいと揶揄されることも多く、とくにうちの課の女性陣からは弟の様に可愛がられていた。
「ねぇ、ねぇ!手伝ってー」
「まったく」
仕事が出来ないわけではない。ただ、こういった盆ミスというものを行うせいでいらぬ時間をとらされてしまうのだ。
仕方ない。と暁の手から先程突き返した書類をひったくり席に着けば、すぐさま鼻孔をくすぐるコーヒーのいい香り。
カタリと俺の机に置かれたマグカップは俺専用らしく、持ってきてくれた本人が俺のために買ってきてくれたらしい。
「部長も会社で犬の世話なんて大変ですね」
眼鏡のブリッジを片手でおしあげながら冷ややかな視線を暁に送る藤堂は暁が嫌いなのだろうか。いつもいつもこうやって暁に突っかかっている。
「俺は犬じゃねぇ!」
いつもは人懐っこい笑顔をうかべている暁が今にもグルルと威嚇しそうな程目を吊り上げ藤堂に向かっている。
その姿が犬ぽいんだ。
と思ったが、俺がそれをいうと暁が暴走でも起こしそうだから口にするのは止めといた。
最初のコメントを投稿しよう!