*石を持って産まれた子*

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「……希望となる子、貴女が進む道が最良となりますように」 リリーは優しい微笑みで我が子の額に最初の口づけを贈った。 誕生間もない赤ん坊は少しずつ産まれた世界の空気に馴染んできたのか、その泣き声を徐々に収めていく。 「湧き水だから冷たいかもしれないが……産湯をしよう。リリー、君は少し休むと良い」 「有難う。あっちの方は湧き水が留まって地熱で温められているわ、そこならこの子も大丈夫」 リリーの腕から赤ん坊を抱き受けると、リリーが初めて訪れるこの場所をよく知っているかのような言葉を口にした。 「この子は自然に愛される子。これから先も自然がこの子を守り、様々な事を教えてくれるはずよ」 リリーの腕から離れ、エルフレットの腕の中に移動した赤ん坊は愚図りだしたように泣き声をあげる。 エルフレットは泣き出した赤ん坊をあやしながら、リリーが教えてくれた湧き水がたまる岩のくぼみに向かった。 リリーが教えてくれたように、岩のくぼみに溜まっている水は地熱で温められていて、赤ん坊の身体を洗うには丁度良い温度と深さがあった。 涙を流し泣き声をあげる赤ん坊をそっと湧き水につからせると、赤ん坊はピタリと泣くのを止めて安心したかのように穏やかな表情でエルフレットに身を任せる。 「……良い子だ……」 おとなしく身体を洗わせてくれる赤ん坊に、エルフレットも笑みが浮かぶ。 身体の隅々まで丁寧に洗い、頭と顔にそっと水をかけると、一瞬むずかるような仕草を見せて赤ん坊は顔を背け、そしてゆっくりとそれまで閉じていた瞼を開けた。 「―……っ!」
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