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生まれたての赤ん坊の瞳はまだ何も認識しないと分かってはいるものの、真っすぐに自分を見つめる澄んだ輝きを放つ漆黒の綺麗な瞳にエルフレットは衝撃を覚えて息を飲む。
見つめられた瞬間、己の人生が深くこの子と関わるのだと直感し、そして文字通り空から降りてきたように赤ん坊の名前が浮かんだ。
「君が迷う時は必ず傍にいよう。―……レイ」
言葉に力が宿るゆえに言葉に縛られ、吟遊詩人はよほどのことがない限り自ら誓いや約束の言葉を口にしない。
真っすぐに己を見つめる赤ん坊―レイの瞳から目を反らさずに、エルフレットは吟遊詩人として誓言を述べていた。
そして降りてきた詩を口ずさむ。
いつもの祝詩とは異なる詩は、レイの誕生を慶ぶ想いと運命を導く祈りの詩だった。
図らずも詩合わせによって石持つ仔―レイの誕生は隠されたものの、言葉の力が効きにくい自然の生き物たちは逸早く運命の仔が誕生したことを感じ取り、祝福と畏怖に沸いた。
大気の風がレイの誕生をあらゆる自然の物達に伝え、拡散が始まる。
ついで産湯としてレイの身体を洗い清めた水が、地中でつながる水脈を通して動植物に運命の仔の様子を伝えた。
春分の新月を迎える朝一番の朝鳥が運命の仔の誕生を祝って高らかにあげた鳴声で、まずは蝶や鳥、野兎や狐といった小動物がレイを一目見ようと始まりの地の廃火山目指して移動を始める。
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