*石を持って産まれた子*

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ソワソワと落ち着きのない草木や樹木、自然の物達の浮足立った気配は光の住人が住まう領域にまで広まった。 「―……ジフリーヌ、ジフ……」 光に満ち柔らかな陽光がさす庭園で、一人の光の住人が友としている風の精霊の名を呼びあたりを見回す。 東のグルーメント公国と南のサハラ公国の境界を穏やかな大河が隔て、その河の河口に光の住人―エルフ一族の一つ、ティル族が住まう領域が広がる。 朝日差す東と南の中央に位置し、エルフ族の中でも三大一族にあげられた。 「ジフリーヌ、どこにいるんだ?」 気紛れな風の精霊は時々こうして人間やエルフをからかって遊ぶ。 『―こっちよ、ミハエル』 クスクスと笑い声をあげて、エルフの尖った耳元で微風と共に小さく可愛らしい声が聞こえる。 ミハエルと呼ばれたエルフは幼さが残る表情にほんの少し苦笑を浮かべ、近くの縁台に腰を下ろした。 「いつもなら僕を起こすのに意地悪するのに今朝はどうしたんだい?、おかげで寝坊して母上との朝食に間に合わなかった」
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