*石を持って産まれた子*

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『あら、起きられないのは私のせいではないわ。寝坊助さん。―それに今日は特別な日なのよ』 「特別な日?」 『そう!、始まりの日よ!私達を導く仔が産まれたの!』 ミハエルが不思議そうに聞き返すと、精霊はよく聞いてくれたと言わんばかりに一際嬉しそうに声をあげ、はるか遠くをみつめて笑顔を浮かべる。 途端に興奮気味な一陣の風が舞って、庭園の草木を撫でて空へと舞い上がっていった。 「どういうこと?―……そういえば、今朝からなんとなく世界が落ち着かない雰囲気だけど……」 人間とは異なり光の住人―エルフは長寿を生きるがうえに感覚が優れ、また聡明で機知に富みささいな変化も敏感に感じ取る力を持っている。 『可愛い寝坊助さん。私と貴方の仲なら教えてあげたいんだけど、隠し護りが発効しているから教えてあげられないわ』 「隠し護り……?、昼と夜が交わる地で何かあるのかい?」 誰にも縛られることがない精霊を唯一従わせる事ができるのが人間の願いや祈りといった思念で、鋭くも精霊が口にした『隠し護り』という言葉にミハエルは人間の世界で何かが誕生した事を知った。 さすがに精霊は自分の失言に慌てた表情を見せ、一瞬だけ姿をくらます。 『これ以上は教えない。―……私は導く仔に会いにいくから当分ここには来れないわ、元気でね。ミハエル』 「え?、待ってジフリーヌ!一体何があるっていうの?」 簡単な挨拶の後去っていこうとした精霊に、今度はミハエルが慌てたように精霊を呼び止めた。
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