*石を持って産まれた子*

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Ⅰ. 始まり地の言葉が語り継がれて数百年の時が過ぎ、役目を終えた始まりの地の廃火山を中心にトゥースと呼ばれる大公国が誕生し、北にエスラ公国、東にグルーメント公国、南にサハラ公国、西にロイズ公国が次いで誕生。 昼と夜が交わる地は大いなる自然と共に人間と精霊が共存し平和な世の中が営まれていた。 遥か昔の光と闇の対立から人々は学んで、闇の魅力に魅せられぬよう注意を払い、また光の住人には必要以上の依存をせずとも敬意を示して友好的に和平を結んで世界の成り立ちを創り上げてきた。 草木が芽吹き新しい年を祝う春分祭が各地で大々的に執り行われるその日、トゥース大公国の宮殿では毎年恒例の歌会始が大公国国王を始め東西南北の国王といった治世を守る者達の前で祭りを盛り上げていた。 歌会始は各地に散らばる吟遊詩人達が集まり、創生の物語を筆頭に各地の出来事やその年の人々の願いや祈りを音楽と共に語り聞かせるもので、特に最後に語られる祈り詩は、吟遊詩人全員が示し合わせてもいないのに一致する事から、その年の吉凶を占うものとされていた。 吟遊詩人と呼ばれる者達は詠い語る時に言葉に力が宿り、その力ゆえに王国に使える宮廷詩人に望まれる者もいる。
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