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「―……リリー、具合悪そうだな。大丈夫か?」
創生の詩が終わり、吟遊詩人一人ひとりが王族達の前で詩を披露している順番待ちの中で、宮殿の柱にもたれている女性の吟遊詩人に仲間の一人が声をかける。「エルフレット……、ちょっとお腹の子がね……少し休めば落ち着くわ」
リリーと呼ばれた女性の吟遊詩人は身重で、この春に子供が生まれる予定だ。
「君の詩番は最後だし、部屋を借りて少し横になると良い。大公を始め王族の皆リリーの歌声が目当てだしそれくらいの融通は利かせてくれるだろ」
いたわるようにリリーに手を差し伸べ、エルフレットは近くの衛兵に声をかけ寝台のある部屋へとリリーを連れていく。
リリーは今宵集う吟遊詩人の中で唯一の女性で、吟遊詩人の始祖とされる一族の末裔であるがゆえに語る言葉の力も強かった。
顔色の悪いリリーを寝台に寝かせ、水と一緒に気付けのシロップを渡してエルフレットはリリーの様子を見守った。
「……昨年はそんな傾向がなかったのに、いつのまにリリーは良い人を見つけたんだい?」
気を紛らわすようにと話しかけたエルフレットは、リリーの顔色がいっそう白くなる変化を見つめた。
「……エルフレット、誰にも言わないで。―……このお腹の子の父親はいないのよ」
「それってどういう意味……?」
「―……昨年の歌会始の後、皆で始まり地で一年の平安を祈って散会したでしょう?、その時私声を聴いたの」
「声……どういう……?」
「仔を産め。石を持って産まれた仔は体になる。そう言われた直後に身体が熱くなったの。そしてこの子を身籠っていたのよ」
「ちょっと待って……。石って……」
親睦のあるリリーが話してくれた言葉の単語一つに、エルフレットは戦慄を覚えて確かめるように青ざめるリリーを見つめる。
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