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しばらく程普は、黙して玉璽を見つめていたが孫堅を見ると、やがて言った。
「孫堅様、これは伝国璽です」
「伝国璽?」
程普は孫堅に伝国璽を渡して、それへ丁重に礼拝をした後、こう説明した。
「ええ。かの始皇帝の頃、鳳凰の巣より宝玉を献上され、これを嘉祥な物事の予兆とした始皇帝はこのように受命於天既壽永昌と刻ませ、方円四寸に形を整え、皇帝専用の璽とした。という話がございます」
「ほう」
「この伝国璽には幾人もの伝記から記述があり、ひとつに伝国璽を持つものは永久に栄えると、いつしか幾つもの代に伝え伝わっている、朝廷の宝のひとつと聞きます」
「即ち、これを持った者は天下の大計をめぐらすべし――か?」
「あくまでそこは言い伝えでございますが」
「ふうん……」
孫堅にとってはこの伝国璽、どうもそれほど幸福な物には見えなかった。
……というよりは、不吉な気さえする。
まるで前世でこれが原因で不幸にあったような。
そんな悪寒すらした。
しばらく孫堅がこの伝国璽を見つめていると、
「父上、ちょっとお貸しください」
伝国璽を横から奪うようにとった者がいた。
「誰かと思えば……」
孫堅の長子、孫策である。
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