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「翼徳はどうした?」
劉備は訊ねた。
「張飛ならば再会の酒を買いにいっております」
「あの馬鹿者……」
劉備は呆れた顔をした。
酒と言えば、なにやら不吉な縁でもあるらしい。
そういえば、寝言でも禁酒令がどうとか呟いていた。
しかし、それは違う関羽は首を横に振る。
「いえ、違うのです兄者」
「何が違うのだ?」
「翼徳は我ら三人揃うならば再び義兄弟の契りを結ぼうと、買いに行ったのです」
そう言うと劉備は喜色一面となって、
「義兄弟の契りをか? それはいい。なんか最初っぽくていいもんな」
と手を叩いた。
「兄者、最初っぽくていいとは……」
「そんな細かいこと気にするな。とりあえず、形式はなんでも大事だという事だ。端折るとろくなことがないからな、うむ。」
「それより、ご覧ください兄者。ここはかつての桃園を思い出すような場所です」
劉備は四方を見渡した。
「ほう、これはこれは……」
辺りは草原で、草葉の青々と茂り、木には桃の花が美しく咲いていた。
陽射しで花の匂いがあがり、微かに濡れた風が彩ったの花弁を散らす。
季節は春。
空は海のように青く、微風は劉備の頬を優しく撫でる。
「雲長ここはどこか?」
「はっ、ここは許昌、今はかつてのように豫州の潁川郡許と呼ばれております」
「許か――ここがまだそう呼ばれているなら、曹操は力をつける前の事か。情勢はどうなっている?」
「はっ、今は黄巾の乱の後、党首である張角が討たれたものの、情勢は回復せず、大将軍何進と宦――」
「ええい、長いっ!」
劉備は説明を遮って、
「いつの頃かもう少し手短に話せ! わかりやすくが大事なのだ、わかりやすくが!」
腕組みした。
「ええー……」
関羽は少し面倒そうな顔をしたが、義兄には逆らえず。
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