江東の虎

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炎上した洛陽から遷都したであろう長安への道筋を辿っていると、道中、ひとつの死体が目に入った。 馬を降りてみてみると、その屍は首がなく、今まで見た中でも特に肥え太っていた。 孫堅はこの体格に見覚えがあった。 その者、衣服の殆どを剥ぎ取られており、特鼻褌(したぎ)以外は着ていない裸同然であった。 しかし、それでも孫堅はこれが誰かを断定していた。 「これは董卓だ……」 呟くと孫堅の将の一人、祖茂(そも)が、 「孫堅様、向こうにも多くの死体がありました」 そう言って、先を指さした。 行ってみると、そこには李儒(りじゅ)をはじめとする董卓の忠臣たちの亡骸が道を埋め尽くしていた。 その数大体百、二百であろうか。 なんとも凄惨な状況であったが、孫堅はそれを見ても眉を顰めるだけだったので、程普が兵達に、 「これらの死体をすべて埋葬する。これらが収まる大きな穴と、油脂を用意してくれ」 代わりに命じた。 それから、兵士らがつくった大穴に董卓らの死体を落とすと、油脂を流し、孫堅は松明を投げた。 しばらくして、それらに土を戻してやると、孫堅等は先へ進んだ。
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