江東の虎

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孫堅は意外な展開から言葉を失っていた。 董卓が死んだ。 しかも、衣類や金品を強奪されている。 おそらく呂布や華雄(かゆう)のような猛将がいなくなったことで強奪を許したのだろう。 或いは反董卓連合の誰かが強襲を試みたのか。 様々な憶測が孫堅の頭をよぎっていたが、程普はこの状況を、 「恐らくは董卓軍の内部の者が関わったのでしょう」 そう事態を読んだ。 「なぜわかる?」 「董卓は猛将の呂布こそいなくなりましたが、彼の騎兵隊は恐ろしく俊敏です。これを襲うとなると、まずその辺の賊では到底かなわぬでしょう」 これには孫堅も頷いた。 「確かにな」 これについては程普より孫堅の方が、肌身で経験した分、よくわかっていた。 「董卓は癇癪をよく起こし、それを恨む部下も多数いたと聞きます」 「……知っている」 「孫堅様。ここはもう引き返されたがよいかと思います。董卓の首がとられた以上、長安に向かう理由もありません」 「まあ、そうだろうな」 「しからば」 「うむ。死体の身元もある程度はわかった事だし、本陣へ報告に戻るぞ」 孫堅は軍を返して本陣へと戻ろうとした。 そんな時であった。 孫堅の武将、韓当が孫堅のもとへ慌てて何かを持ってきた。 「ご主君、先の林中よりまたも女官の死体があり、このようなものを抱えておりました!」
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