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「そこでわしは考えたのだ。ならば老いも病もない世で今度はそなたらが決着をつければよいと」
「ええー。そんなことができるのか?」
「できる。ただし、条件付きでな」
「条件?」
首を傾げる劉備は、暫く考えた後、苦葉を噛んだような顔をした。
「むむむ、なにやら孔明のような物言いだな。嫌な予感しかせん。して、その条件とは?」
「うむ。その条件だが簡単な話。かつての兵や将、ましてやそなたの砦や城などほぼない状況から始めてもらう」
「ほぼない状況?」
「そうだ。かつての仲間たちの記憶はほとんどかき消され、そなたは再び草鞋売りの劉備に戻ってもらう」
「え?」
聞いた途端、劉備は立ちくらみがした。
「ちょ、ちょっと待て。草鞋売りの頃に戻れと?」
「そうだ。漢の時代に戻るのだからな。群雄割拠していた頃があったろう?あの時代に戻ってもらう」
「この玄徳もじゃあ記憶を失うのか?」
「いんや?そなたはわしの力をもってしても消せぬ。そなたを想う魂の数があまりに多いためか手をつけられぬのじゃ」
「この玄徳だけが記憶を?」
「残念だがそれも違う」
「――と、言うと?」
「うむ、実はかつてそなたが最も厄介視した曹操、孫権などの者も、完璧に記憶が残っている」
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