盤古

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「……」 あまりいい顔をしない劉備。 というより顔色が真っ青である。 他の君主は元々名家の出身。 こっちは母と二人暮らしの筵売り。 自分が一番不利なのは明々白々である。 「まあ、他の者は忠義心の記憶や裏切りの記憶など、断片的なものがほとんどであると思うがな」 「そなたのように臨終の記憶まではっきりある者。加えて不老長寿の力を得ている者はそなたを含めて四人いる」 「四人? もう一人いるのか……」 「ああ。まあ誰か教えると面白くないから黙っておくがな、ムフフ……」 ため息をつく劉備。 「ふん、この玄徳はとうに面白くない」 白目を向ける劉備は更に言う。 「どうせそなたが言うのを察するに、先に言った曹操(そうそう)孫権(そんけん)。後は……そうだな、袁紹(えんしょう)董卓(とうたく)もしくは孫堅(そんけん)辺りであろう」 「ぎくっ!?さ、さあな……」 明らかに動揺している様子。 劉備は頭を抱えるようにため息をついた。 「ぎくっていっちゃってるもんな……」 「ち、ちがいますー!」 「はいはい……」 劉備は頭が重くなった。 あの貧乏だった草鞋売りの時代に戻ると。 しかも、曹操や孫権にはびっしりと記憶が残っているに違いない。 あの曹操と再び渡り合うのかと。 それはあの時は運と偶然が繋ぎあわされたように上手くいった。 しかし、かつての敵からも目標にされている中、かつてのように再び草鞋売りから漢中(かんちゅう)の地で王を自称することなど到底無理な話ではなかろうかと。 劉備は考えた。 「す、すまんが拒否させてもらえるか。兵や城はおろか、雲長(うんちょう)翼徳(よくとく)もおらぬこの玄徳に天下など到底ありえぬ」 「ハハハ、そういうであろうと思ったわい。そなたが一番不利であろうからな。だがわしが図らずもそなたには救済の手がある」 「救済の手?」
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