闊歩する女

　Ｂさんは新規プロジェクトの役員へのプレゼンを明日に控え、独りオフィスに残って、資料の最終チェックを行っていた。
　数か月かけて練り上げてきたもので、決裁が下りるかどうかの正念場である。絶対に手は抜けないと、二重三重のチェックと質疑の想定問答を行っていた。完璧を目指したいが、時間は有限だ。だが一分の隙も無いものを作りたい――そんな一心でパソコンのキーを叩く。

　ワンフロアぶち抜きのオフィスのほぼ中央辺りがＢさんの席だ。Ｂさんの会社は残業時、節電のため、自席周り以外の電灯を消すことになっている。スポットライトみたいにＢさんの周囲を浮かび上がらせる白い灯りの下、黙々と作業をこなしていた。