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まあそんな気取った名前とは裏腹に、彼は非常に気さくで無邪気な、良い意味で男の子らしい男の子だったので気があったんですよね。私が病気になる前は毎日のように彼とサッカーや鬼ごっこをして遊んでいた記憶があります。彼も運動神経は良かったんですが――小学生の一時期の女の子って、男の子より成長も早いし平均身長も高いくらいですからね。そうでなくても運動神経の良かった私に彼が勝てるはずがなく――かけっこも何もかも含めて、完全に私の勝ち逃げ状態だったわけなんですが。
『もう、一応私病気なんですよ?元気にしてるか?ってのもおかしい気がしません?』
『だっていつもお前は元気にしか見えないからな。というか、未だにお前が“病気”っていうのが信じられん。今は何してんだ?』
『あ、そうでした。お母様が新しいDVD買ってくれたんです。見ます?もし千夜がもう見たことのあるヤツだったら申し訳ないんですけど』
狭い部屋での生活で、外に出られないので運動系は非常に限られたことしかできないのですが――それでも、退屈するようなことは殆どありません。何故なら私が望めば、お父様もお母様もいろいろな本やDVD、ゲームを買って私に下さるからですね。
下さる本やDVDは何故か少し古いものが多いのですが、特に気にしたことはありませんでした。不満があるとすれば、外で思い切り走れないことと、TVやパソコンが部屋にないことでしょうか。この部屋に来た時はまだ小学生でしたし、携帯電話禁止の学校でしたので特に携帯を持ったこともありません。まあ、千夜は中学生になっても持たせて貰えていないようですし、それは私の年齢なら別段おかしなことではないのかもしれませんが。
『へえ、ラストニンジャか…渋いの持ってきたな、お前の母さん』
『お父さんが尊敬している俳優さんが出てるんだそうですよ。…ニンジャやサムライって、昔から海外で人気があるみたいですよね。そういえば千夜は海外に行ったことはあります?というか、千夜は将来お父さんみたいな俳優さんを目指してるんですか?前にそんなこと言ってた気がするんですけど』
『それなあ。まだ迷ってるんだよ。サッカー選手も悪くないなーってかんじだし…』
『ええ…千夜の腕でサッカー選手?それは無理じゃないですか、私にあんだけボール取られまくってたのに』
『おま、相変わらずはっきり言う…!』
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