<前編>

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 私はきっと、彼の優しさに甘えていたのだと思います。  同い年の彼が、中学校を卒業する前に私の病気が治れば。同じ学校に、私も通えるようになるはず。  彼が言う“可愛いセーラー服”を着て、並んで歩けるようになるはず。  私は、何も気がついてはいませんでした。  否、きっと気づかないようにしていたのだと思います。  タイムリミットは、刻一刻と迫っていたというのに。 ――小学校五年生の時から、ずっと私はこの部屋の中。箱庭のように小さなこの世界で…外に出ることも許されない。  お見舞いが許されているということは、感染するような病気ではないのでしょう。でも、色々な薬を打っても、検査をしても、私の病状は一向に良くなっていないのだそうです。手術をしないということは、きっと手術で治る見込みもない、ということなのでしょう。  私の命の期限はあとどれくらい?あと何年?あと何ヶ月?それとも特に自覚症状もないまま――明日、突然ぱったりと倒れて死んでしまう、なんてこともあるのでしょうか。 ――千夜は、一生懸命私を励ましてくれる。不安な顔なんて、しちゃいけない。千夜を苦しませたくない…。  私は少しずつ、自分の運命を受け入れ始めていました。  もうすぐ死ぬのだとしても、いつ死ぬのかもわからないのだとしても。  最後が来るその瞬間まで――笑顔を絶やすことなく、微笑っていようと。
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