2人が本棚に入れています
本棚に追加
私はきっと、彼の優しさに甘えていたのだと思います。
同い年の彼が、中学校を卒業する前に私の病気が治れば。同じ学校に、私も通えるようになるはず。
彼が言う“可愛いセーラー服”を着て、並んで歩けるようになるはず。
私は、何も気がついてはいませんでした。
否、きっと気づかないようにしていたのだと思います。
タイムリミットは、刻一刻と迫っていたというのに。
――小学校五年生の時から、ずっと私はこの部屋の中。箱庭のように小さなこの世界で…外に出ることも許されない。
お見舞いが許されているということは、感染するような病気ではないのでしょう。でも、色々な薬を打っても、検査をしても、私の病状は一向に良くなっていないのだそうです。手術をしないということは、きっと手術で治る見込みもない、ということなのでしょう。
私の命の期限はあとどれくらい?あと何年?あと何ヶ月?それとも特に自覚症状もないまま――明日、突然ぱったりと倒れて死んでしまう、なんてこともあるのでしょうか。
――千夜は、一生懸命私を励ましてくれる。不安な顔なんて、しちゃいけない。千夜を苦しませたくない…。
私は少しずつ、自分の運命を受け入れ始めていました。
もうすぐ死ぬのだとしても、いつ死ぬのかもわからないのだとしても。
最後が来るその瞬間まで――笑顔を絶やすことなく、微笑っていようと。
最初のコメントを投稿しよう!