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「小さく削って持ち出したけど、……何故か光らなくなった」
彼女はポケットにあるものを掴むと、魚釣り上げる様に左手を引いた。
その手には暗く濁った色の小さな石が一つあった。
今もゆっくり沈んでいる夕陽の方を向いて、彼女は何となく石を透かして見ようとする。
どうも彼女の持つその石は元々、瑠璃だったその欠片らしい。
だからと云って硝子玉の様な透明さと輝きは無く、どう足掻いてもただの石になってしまったものは、石でしかないかもしれない。少女が望んでいた様に何も答えてくれる事は無かった。
「……謎だねぇ」
青年はそう呟くと、帰りの飛行機の操縦に集中した。
──彼女は仕方無く諦めて次の輝きを探しに旅立とうとする。
「……ありがとう」
また来るよと次いでに云う様に、彼女は山のある方角へ目礼する。乗っている小さな飛行機は、地平線の向こうへと今も遠ざかっていた。
次に出逢う新しい輝きは……きっと、きっと。
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