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それでも今、立っているこの場所は現実に在るものだ、夢じゃないと。彼女は思考を巡らせて一歩、一歩、神秘の深淵へと潜ろうとする。
「……」
そう云えばと彼女は、いつかの旅の記憶の中でもそんな色と同じ瞳をしている人が居た事を、また思い浮かべていた。
思い浮かべている内に、先に行ってしまった小動物にやっと追いついた。その場で立ち止まって、その先にあるものを眺めている様だ。
そして小動物の眺めている先から、一際強く輝くものを彼女は見つける。
周りから溢れるばかりの神秘の中で、一際強く輝くそれはその名の通り、瑠璃。
暗い色なのに輝ける石は、深い海の底、或いは深い夜の空色をしている。
深淵と呼べる場所で輝ける理由は、遠い地上の光が晶洞の細かな隙間を潜り、幾つもの屈折で運ばれて来ている。
「……大きい」
しかしやっとの思いで見つけた輝きは、あまりにも大き過ぎて持てそうにない。この時の為に取っておいた、リュックの半分の空っぽに詰められそうな大きさなら持ち出せたかもしれない。
折角、此処まで来たのに、無力を感じた彼女は──
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